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海外のWeb業界で働くには?
「海外で就職するのは大変ですか?」よくこのような質問を頂きます。答えは決まって「はい、大変です」。そこには超えなければならない壁がいくつもあり、簡単に「海外で働くって楽しいよ!みんなおいでよ!」なんて言えません。今回はオーストラリア・シドニーでの就職を記念して(?)今まで頂いたメールの返答をざっくりとまとめてみました。Webデザイナーに限らず他業種の方にも当てはまると思うので、海外就職を夢見ている人はぜひ読んでみてください。
まず何から始めればいいの?
「海外で働いてみたい」「でも何から始めれば…」との声をたくさん頂きました。私の場合特に何も考えずふらりと遊びに行ってそのまま居座ってしまったタイプですが、そうではなく、最初から海外就職を目標にしている人へ向けて記事を書いてみます。
まずすべき事、それは自分がこれからやりたいことを明確にする、という事です。漠然と「海外で働く」と行っても、どこの国で?どの都市で?日系企業?現地企業?どんな職で?給料は?などなど、ぼんやりとしていた考えを明確にしましょう。次に自分が今できることを明確にする。現地の言葉がしゃべれるのか、自分が就きたい職業での実務経験はあるのか、デザイン・コーディング・プログラミング・マーケティング…何が一番得意なのか。この二つをはっきりとさせれば、次に自分がすべき事が見えてくるはずです。例えば語学力に自信がないのであれば、日本語で働ける企業を探すのか、日本で勉強するのか、現地に行って勉強するのか…。その他の点でもどうギャップを埋めていくのかを考えましょう。
海外の Web 業界って結局どうなの?
情報の早さ・多さ
私は英語圏の国にしか住んだ事がないので、その中で感じたことを書きます。まず、やはり英語は IT 大国アメリカの公用語なだけあって情報がとにかく早いです。新しいデザイン・新しいテクニックなどが日々目まぐるしく公開されます。また、情報の多さもハンパない。日本語で検索してもなかなかでてこない情報が英語では一発でずらっとその情報がでてきたり…。新しいソフトウェアなんかも最初は英語で公開し、後に他言語へ…という事も多々あるため、「英語」というだけで一歩進んでいる気がします。
SEO と SNS
SEO はとても大切です。これは日本でも同じことでしょう。ただ海外の場合はそれと同じくらい、場合によってはそれ以上大切なのがソーシャルネットワークサービス。Facebook や Twitter、Youtube などでどれほど話題を呼べるか。また Delicious、Digg、StumbleUpon などでどれほどブックマークされるかが勝負となっています。日本でも Twitter が普及してきていたり、はてなブックマークの利用者が多いのですが、やはりユーザー層が限られている気がします。
EC サイト
日本の EC サイトは日本国内のみに対応している事が多いのですが、基本的に海外の EC サイトは商品を全世界に発送しています。そのため、送料の設定がかなりややこしい。国外は全て一律料金の場合もありますが、国によって変わったりする場合も。さらに国内発送の場合でも州によって・商品によって税率が違うためその設定でも泣きそうです。いや泣きました。こういった面でも海外の Web 企業は全世界を視野に入れていると思います。
海外就職のメリット・デメリット
メリット
- 自由時間を満喫
- 完全実力主義
- 意見をはっきり言える
メリットはやはり働き方でしょうか。日本のように家族よりなにより仕事が大切、とは考えません。残業するにしてもそれに見合った給料が支払われたり、残業禁止の企業も。今回就職した会社では残業禁止です。6 時になったら強制退社。その分仕事中の集中力はみんなハンパないです。退社後や休日はゆっくり家族と過ごしたり、自分の趣味に没頭したりと、仕事以外の時間を楽しんでいます。また実力主義であるため、会社の勤務年数ではなく、自分のやる気と実力次第でどんどん昇給していく人もいます。そういう人はみんな自分の考えをはっきりと言い、間違っていると思ったことや納得のいかないことに関しては、たとえ社長が相手であっても双方の意見を出し合い、とことん話しあいます。
働くこと以外では、何年たってもそこは「外国」なので、いろんな発見があって刺激的です。なかなか飽きません。フレンドリーな人が多く、何かと融通がききやすい点も。
デメリット
- 不安定な雇用状態
- 社会保障の不安
- 働き方の違い
逆にデメリットは、仕事の面では保証がないところ。日本と違ってその日のうちにクビにすることもできます。また後に説明する就労ビザを保持して働いていた場合、クビになる=ビザの効力がなくなる=すぐに国外に出なければならない、という恐ろしいことに…。年金や保険に関しても、日本の方が手厚く保障されていると思います(もちろん国によって変わりますが)。企業によっては、手続きをすべて自分でしなければいけない場合も。働き方に関しては、慣れてしまえばあまり気にならなくなりますが、仕事とプライベートを完全に分けているので、休憩中は電話にでない・自分の担当の仕事以外はどうでもいい・いちいち細かいところまで言わないと理解されない(言わなくても分かるだろう、は通じません)…など、小さなイラッが連発します。
他にも、私はあまり感じませんが、人によってはサービスが悪い、交通機関が不便、日本にいる家族のこと、郵便が不便、日本食が高い、差別、遊べる施設が少ない、みんないい加減すぎる、、など、日本の生活に慣れていればいるほどデメリットを感じる人が多いようです。
超えなければならない3つの壁
基本的にこの 3 つをクリアしないと海外就職は難しいです…
- 実務経験
- 語学力
- ビザ(査証)
実務経験
日系の会社で働くにしても実務経験がないと何もできません。日本のように**「新人を育てる」という概念がないためです。実務経験がないのであれば海外の学校(大学・専門学校等)を卒業し、インターンなりなんなりで実務経験を積むか、留学が難しいなら日本である程度(3年以上)働いてから海外に渡ると就職しやすいかもしれません。学歴が採用条件のひとつという場合もありますが、逆に職務経歴や実績が重視され学歴は問われない**、ということも多々あります。特に Web 関連の仕事だと普通科の4年制大学の学歴よりも、高校卒業後 Web デザイナーとして 2 年働いた、という方が有利な場合も。
語学力
日系以外の会社で働くには語学力が必須です。これは英語でいう TOEIC や TOEFL のスコアの問題ではありません。(現地の人はその存在すら知りません)「Web デザイナーやプログラマーは技術職だから会話力はいらない」なんて思ったら大間違いです。上司からのプロジェクトの説明や、クライアントからの依頼を直接聞いて、理解して、説明するくらいの語学力は必要です。
ビザ(査証)
ビザ(査証)とは、政府からの「その国に滞在していいよ、働いてもいいよ」という証明書のようなものです。観光目的で短期間滞在する場合は必要ありませんが、長期間でさらに就労するためにはビザが必要です。ビザの取得方法や条件・期間などは国によって変わってきます。基本的には就職先を見つけ、その企業に就労ビザの取得をサポートしてもらいます。そのためにはスポンサーとなる雇用先の企業が、政府に自分以外にこのポジションで働ける人はいないということを証明しなければなりません。時間もお金も手間もかかるため、雇用主の協力は不可欠です。
上記のややこしい手続きをしなくても、ワーキングホリデービザを使えば、国によって最長2年まで、雇用主のサポートなしで就労することができます(限られた国のみ・年齢制限有)。このビザを使って数カ月〜数年働いてみて、雇用先に就労ビザのサポートを交渉する方法もあります。詳しくはワーキングホリデー協会のサイトをチェックしてみてください。
焦らずに。計画的に。
今現在、語学力がなくても実務経験があればなんとかなる場合もあります(日系企業等)。ビザがなくてもサポートしてくれる企業があるかもしれません。ただ実務経験がなければどこも雇ってはくれません。今焦って海外に渡らなくても、今続けている事が一番大切だったりします。しっかりと自分の目標・計画をたてて、少しずつ夢に近づきましょう。今日がもし夢に遠くても諦めないでください!
It’s up to you to draw a line between dreams and reality.
夢と現実の間に線を引くかは君次第。