更新日
最初が肝心!初めての打ち合わせ「キックオフミーティング」の心得
プロジェクトを始動させるため、顔合わせのために行う最初のミーティングを、サッカーの試合開始の合図のキックオフにかけて「キックオフミーティング」と呼びます。キックオフミーティングはプロジェクトの目的を明確にしたり、クライアントと制作チームの親睦を深めたりと、今後業務を進めるにあたって欠かすことのできない重要なミーティングです。今回はそんなキックオフミーティングの必要性や効果的な進め方などをご紹介します。
キックオフミーティングの目的
そもそもなんのためのキックオフミーティングなのか?ここをきちんと理解しておかないと、結局なぜ集まったのかわからなくなってしまいます。まず覚えておきたいのは、クライアント自身も Web サイトを通じて何を発信したいのか、漠然としか把握できていないという点です。キックオフミーティングではそんなクライアントから意見を引き出して、あいまいな目的、バラバラな意見、膨大なコンテンツをまとめていきましょう。
また、この段階では必要な情報を集めること以外に、クライアントとプロジェクトに関わる人間の関係を円滑にするための顔見せという役割もあります。実際に会って話すことで、その人の細かな表情やしぐさ、ミーティング以外での振る舞い方などから為人が見えてきます。極力プロジェクトに参加する人全員がこのキックオフミーティングに参加して、情報共有やプロジェクトの共通理解を促すことも大切です。
私は長年リモートでの仕事を続けています。その中で、効率だけを考えたらリモート作業やオンラインミーティングも有効ですが、やはり信頼関係を築くには実際に会わないと難しいなと痛感しました。特に最初の顔見せは重要です。なるべくオンラインではなく、直接会えるよう努めましょう。プロジェクトに関わる人全員にやる気を出してもらうためにも有効なミーティングとなります。
ミーティングの前に準備しておくこと
ミーティングの流れ
絶対に準備しておく必要があるのが、ミーティングの流れを考えておくことです。まずお互いの自己紹介、続いてプロジェクト計画の説明、質疑応答…などなど。流れを考えておかないと、壮大な夢や趣味の話をダラダラと続けて終わってしまった…なんてことになりかねません。各話題に時間を割り振っておけば、より計画的にミーティングを進められます。話が広がっていくことを考慮しつつ、時間に余裕を持ってスケジュールを組みましょう。
名刺
前述の通り、キックオフミーティングの大切な目的のひとつは自分を知ってもらうことです。制作会社にお勤めの方にとっては当たり前かもしれませんが、フリーランスとして活動している人は意外と名刺が用意できていない方もいらっしゃいます。必要枚数よりも少し多めに持ち歩くようにしておきましょう。
料金表
クライアントにお見せするための料金表がある場合は、印刷して持っていきます。「あくまで目安である」ことを伝えつつ、大まかな予算を聞き出せる材料になります。クライアント側も、何にどれくらい費用がかかるのかがわからず漠然と不安に思っている可能性が高いです。この場ですぐに契約を結ぶわけではないので、一旦持ち帰っていただける料金表があると安心してもらえます。
ミーティングをする環境
場所
ゆっくりと話せる場所を用意します。フリーランスの場合は会議室を借りたりしなくても、カフェやレストランでのランチミーティングも OK。最初の打ち合わせは変にかしこまった場所よりも、お互いリラックスできる場所がいいでしょう。私の場合、今まで行ったキックオフミーティングの 7 割がランチミーティングでした。打ち合わせをしながらだと食事を楽しむ余裕は正直あまりありません…ので、空腹過ぎない状態で臨むといいでしょう。
時間
ミーティング時間は約 60〜90 分程度を予定しましょう。あまり長すぎるとダレて要点とは無関係の話に飛びやすくなります。時間帯は 10 時から 16 時あたりが無難ですかね。私はランチミーティングならぬブレックファストミーティングをしたことがありますが、朝 8 時からカフェで朝食を取りながらのミーティングはなかなか堪えました w
オンラインミーティングで時差がある場合は、クライアント側のタイムゾーンに合わせましょう。時差の計算はTime.isを使うと便利です。
服装
服装は変に着飾ったりかしこまった雰囲気にしなくても大丈夫。最低限、清潔感のある服装であること。過度な装飾を避けること。女性の場合は変に露出していなければ問題ありません。制作会社にお務めの方であれば、いつもの出退勤時の格好で OK。
これまでの経験上、服装よりも持っているガジェットがポイントです。最新のスマートフォンやスマートウォッチ、個性的なケースやステッカーなどは目につきやすく、雑談のネタとしても使えます。
ミーティングの進め方
自己紹介
まずは自己紹介。相手を知ることも大切ですが、自分を知ってもらうことも同じくらい大切です。名前しか知らない人と仕事をするよりも、その人の表情、辿ってきた経歴、大切にしているもの等を簡単にでも理解し合えていた方がコミュニケーションも取りやすくなります。プロジェクトを進める上で一番怖いのがコミュニケーション不足です。全員が同じチームの一員であるという意識付けをするためにも、「もっと相手を知りたい」「もっと相手に知ってもらいたい」という気持ちで取り組みましょう。
かと言ってダラダラと趣味について語ってしまっては時間がなくなるばかり。脱線した話題を軌道修正していくのも私たちの仕事です。用意しておいたミーティングの流れに沿って次の話に進めていきます。
Web サイトの目的を明確にする
キックオフミーティングの最重要項目は目的を明確にすることです。しかし、最初から細かい話を詰める必要はありません。まずはその会社やプロジェクトの存在意義といった大きな話、ざっくりとしたクライアントの夢を聞き出します。おそらく多くのクライアントは壮大な夢や希望が多々あることでしょう。その中から「何を一番伝えたいか」をひとつに絞り込み、参加者全員と共有します。
一番伝えたいことは利益に直結しない、会社の使命やポリシーと言えるものとなるはずです。例えば音楽教室の場合は「生徒を増やす」のではなく「音楽の楽しさを伝える」、チャットアプリの場合は「ユーザーを増やす」のではなく「コミュニケーションの大切さを伝える」などです。この軸をしっかりと立て、それを達成するための細かい話やコンテンツ内容を組み立てていくのがコツです。そうすることで必然と優先順位も明確に見えてくるでしょう。
ターゲットユーザーを明確にする
何を一番伝えたいかが明確になったら、次はそれを「誰に一番伝えたいか」を考えます。クライアントの中には「30 代から 70 代の女性」という、あまりにも広すぎる年齢層を提案する方もいらっしゃいます。しかしこれだとターゲットが定まらず、結局誰にもアプローチできない結果になってしまいます。年齢幅は ±5 歳程度にとどめておきます。
また、10 代以下の年齢層を対象にした場合は、さらに細かく絞り込む必要があります。この世代だとひとつ学年が変わるだけでアプローチの仕方が変わってくるからです。例えば受験生である中学 3 年生と、受験が終わった後の高校 1 年生では、生活環境も大きく違いますよね。
年齢層が決まったら、他に性別、生活環境や仕事環境、収入状況までざっくりと考えておきましょう。「ざっくりと」というのは、この段階では細かなペルソナや Web サイトを利用する状況までは決めなくてもいい、ということです。それらはこのキックオフミーティングを行った後、調査や分析をする段階にて細かく設定していきます。
質疑応答
予定していたミーティング内容が一通り終わったら、両者による質疑応答タイムです。クライアントはわからないことだらけ。何がわからないかわからない、なんていう場合もあります。そのため、「何か質問はありますか?」という尋ね方だと、本当にわからない人が会話の輪の中からあぶれてしまう恐れがあります。そのような状況に陥らないよう、参加メンバー全員に発言を促し、誘導していくことも大切です。
質問内容によってはすぐに返答できないものもあるでしょう。そんな場合でも大丈夫。ミーティング後に調査して返答すれば OK です。ただし、なるべくミーティング当日中、遅くとも次の日までには返答しましょう。
次回ミーティングの約束
ここまでで、キックオフミーティングの目的である顔合わせと、Web サイトの目的の明確化は達成できたはずです。内容によっては料金や機能の話もできたのではないでしょうか?そしていよいよミーティングの締めの段階です。ここではこれからの話、今後のスケジュールの話をしていきます。
次のミーティングはクライアントの都合にもよりますが、なるべく次の週には行えると ◎。そこでさらに細かなターゲットユーザーやコンテンツ内容、制作スケジュール、料金などの話を詰めるので、その旨を伝えておきましょう。
ミーティング後にすること
話の内容をまとめる
ミーティングが終わったら、忘れない内に話した内容や、今後どのような設計・仕様になるかなど、大まかな内容を記載した文書またはメールを作成し、クライアントに送信します。話の中で別の Web サイトやアプリ、サービスの話題が出たなら、その URL 等も書いておきましょう。プロジェクトによっては紙媒体や TVCM など、Web 以外のアプローチも考えられるはずです。そのための資料も一緒に送っておくと、次回のミーティングも円滑に行えます。
競合調査
同じ志を持った同業者、ライバル社の動向やアプローチ方法などを調査しておきます。競合サイトはどのようなサイトなのか、ターゲットユーザーは誰なのか、規模や機能などを洗い出し、次回のミーティングで共有します。ただし、やはり我々は Web 屋なので、その業界のことはクライアントの方が詳しい場合がほとんどです。こちらからできることは、ユーザー目線で競合とされるサイトを調べること。クライアント側の目線とはまた少し異なる可能性もあります。このあたりのすり合わせを、次回ミーティングで入念に行います。
次回ミーティングの日程確認
キックオフミーティング時に次回ミーティングの日程を調整したかと思いますが、口頭だけではなく、メールでも確認しておきましょう。同行するメンバーのスケジュール調整も必要です。キックオフミーティングからあまり間をあけずに次のミーティングを入れてしまうと、今度はこちらの準備が整わない場合もあります。余裕を持ってスケジュールを組みたいですね。
ミーティング時の注意点
専門用語を使わない
最初のミーティングではクライアントがどれくらい Web 関連の用語や最新の技術、Web マーケティングについて知っているかはわかりません。「現在の Web サイトの PV はどれくらいですか?」「ドメインは取得していますか?」「SNS のアカウントはお持ちですか?」などと聞いてしまうと、そういった用語に疎い方の場合はミーティングに萎縮してしまうことも。相手がきちんと理解していないまま話をすすめてしまうのは危険です。話の中からクライアントのネットリテラシーを把握していきましょう。かと言って知らないことを馬鹿にするなんて言語道断です。知らないことは恥ずかしいことではないんですから。初めは専門用語を極力使わず、使う必要がある場合は丁寧に説明しながらミーティングを進めましょう。
質問攻めにしない
最初はお互いわからないことだらけ。だからと言って取り調べのように矢継ぎ早に質問を浴びせてしまうと、クライアント側もあまりいい気分にはなりません。特に機能や予算などの話を細かく質問していると、簡単な内容に思えても相手からすると「難しい話ばかり」と捉えられてしまいます。
最初のミーティングでは絶対に聞いておかなければいけない質問のみをいくつか用意しておき、あとは会話をしながらうまく引き出していきましょう。言うのは簡単ですが、話を引き出すって難しいですよね…。こればかりは慣れなのかなぁとも思います。幸いキックオフミーティングの場合はクライアントと自分の一対一ではなく、プロジェクトに関わる他のメンバーも同席しているはずです。他のメンバーにも補足してもらいつつ、クライアントを含めたチーム全体で共通の認識がもてるように進めていきます。
まとめ
キックオフミーティングでは話を詰めすぎず、ざっくりでいいのでプロジェクトの全体像をクライアントと制作チーム全員で共有することが大切。その中で「何を誰に一番伝えたいのか」だけは漏れずに明確にすること。お互いを知ることも大切なので、ほどよく雑談を交えつつ、次回のミーティングにつなげましょう!
次のミーティングではより詳しい機能や費用、スケジュールなど、プロジェクトでは欠かせない要素を確定していきます。「要件定義」と呼ばれるものですね。この辺もまた改めて記事にできたらなーと思っています :)